【DAY95】狂気のトマトぶん投げ祭り、トマティーナ(スペイン/ブニョール)

ヨーロッパ周遊の旅程は全部この日のために組んでいたから、やりこんだRPGでラスボスに戦いを挑むような、楽しみやったドラマが終わるような、そんな楽しみと怖さと寂しさが混ざった気持ちでこの日を迎えた。本気度えぐう。

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トマト祭り(トマティーナ)について

トマティーナとは

毎年8月の最終水曜日、スペインはブニョールの一本の公道で行われるトマト投げのお祭り。使われるトマトは収穫できないような規格外のトマトで、その重さなんと約150トン!!

ブニョールは人口1万人ほどしかいない田舎町やのに、お祭りの日には世界中から2万人以上が集まる。狂ってやがる。

「トマトがもったいない!」との声があったんやけど、あれは食えるもんじゃありません。食用にならないやつです。めっちゃ臭い。

起源

1940年代頃、町人同士のケンカでトマトを投げたことが始まったとか、色んな説が噂レベルではあるらしいんやけど、いずれにせよ詳細は不明らしい。

祭りが始まった初期の頃は警察の介入でたびたび止められていて、遂には1950年代に正式に禁止されてしまったそう。

で、町人は禁止令に反対する気持ちを表明するために、棺桶にトマトを入れて町を練り歩くっていう、「トマトの葬式」をやったんやって(笑)反対表明面白すぎる。

1959年、遂にその反対表明が叶いトマティーナが復活。2002年には国際観光名所リストに追加された。

2012年に人数制限や参加費が必要になったり、コロナで開催不可になったり等はあったけど、現在にも受け継がれるスペインでもっとも有名なお祭りになったとのこと。

参考: La Tomatina Festival, Spain’s Annual Tomato Throwing Celebration

日記(2022/8/31)

前夜祭から乗り込む

私らが滞在してたバレンシアから会場のブニョールまでは電車で一時間の距離。なんと終電は22時台。もっと遅いと思ってたわ早すぎる。

「はあ~~今日オールか、、、野宿の覚悟できてないよお~~、、」と楽しみなんか嫌なのか、心の準備ができていないまま決戦に迎えて宿泊先で荷造りをしてたらなんと雷雨。

この晴れ続きなヨーロッパの夏の気候で、かつこの無計画旅のなかで数少ない大イベントになんで天気悪くなるん!?私は前世どんな極悪人やったん!?

夜のバレンシアノルテ駅

ヨーロッパの長距離用電車の中心駅って半円状の天井に電車が並んでて、いつでも映画の撮影現場になれそうな雰囲気がたまらん。

過去の参加者のブログを読むと、電車に乗る時点で盛り上がってる若者だらけって読んでたのに全然人がいなくて不安になってくる。。

前夜祭ってほんまにあるよな、、てかトマティーナ明日であってるよな、、

電車の扉は自分の手で開ける形式が多いんやけど、乗る電車の扉が全然開かなくて焦った。公共交通機関に乗るときハプニング起こってしかないから毎回めっちゃ前に到着するようにしてる。

「出発直前にみんな乗ってくるよな、、」ってドキドキしてたのに、結局全然乗ってこなくて不安な気持ちをかき消すかのように二人して読書しながらクレイジーフェスティバルに向かう高尚な夫婦。

お義父さんがくれた本。おすすめ。

しばらく乗ってると突然若者が乗ってきた、一瞬で車内はクレイジーに。

「今日が祭り前やから特別」とかではなく、日常的に容赦なく騒ぐ。大阪から上京した時に「東京の電車ってめっちゃ静かやな」ってびっくりしたんやけど、この人たちが日本に旅行に来たらどんなリアクションするんやろ

外国人の大声の中に、おとなしく話す日本語が聞こえてきた。ちらっと斜め後ろの席を見るとインスタで繋がってた旅人を発見。今年は日本人全然いなさそうと思ってた矢先に発見したからめっちゃ安心して思い切って話しかけてみた。

大学生の男の子(甲)と25歳の男の子(乙)。それぞれ一人で世界旅行をしていて、タイのホステルで知り合ってて、そのあとバレンシア駅で偶然再会したらしい。二人とも一人で前夜祭から乗り込もうとしてた心意気がもはや怖い。

甲は次モロッコに行くか南アフリカに行くかを迷っていて、乙は昨日までモロッコにいて、次はアイスランドを自転車で一周するらしい。聞くだけで面白すぎて話題が尽きなかった。変な場所で会う日本人とは変な連帯感が生まれる。

ブニョールに到着したものの、駅は真っ暗。若者に続いて歩くこと20分ほど。

マップを見なくても、ここが明日の会場なんやなと誰もが分かるような完全に対トマト防具。

しかも、ブルーシートだけで防具しているエリアや、アルミで塞いでる本気のエリアもあって、ディフェンスの材質によって明日の激戦区が分ってしまう

もう疲れた嫁

前夜祭は地元の人の参加が多いらしく、意外と若者はあんまりおらず中年が多かった。

爆音を鳴らし踊り狂いお酒を飲む人でいっぱい。盛り上がっててよかった~と思ったのもつかの間、突風と雨が降り始め、スペイン人のおじさんが「mucho!mucho!」と言いながら机や椅子を急いでしまうので、やばさを察し慌てて店内に逃げ込んだ。

若者が全然おらず中年ばかりなうえ、雨のせいで前夜祭は終了ムード。思ってたんと違う~!朝まで叫び狂いたかったのに消化不良気味。

この店が朝まで開いていることを願いながら、旦那、甲乙と四人で過去の旅路や自己紹介をして時間をつぶす。

まだ3時、、!もう眠いと言って旦那と甲は就寝。

恐れていた二度目の野宿

外はすでに静かになってて、みんなどこに消えたのかもわからないまま店が閉店時間になり外のベンチに移動。

結局恐れていたこの旅二度目の野宿になったものの、日本人四人(+謎の韓国人)が集まってぎり安心。人妻28歳が野宿ってパワーワードすぎい。

地獄絵図

地べたに男三人を置いて、私たちは明日の会場を一度下見しに行くことに。「ここは坂になってて滑るから絶対危ない」「ここは脇道があるから逃げ場になる」等入念にチェック。

トマト祭りに賭ける想いが強いというよりも、絶対にケガをしたくない。そもそもインドア夫婦がこんな陽キャ祭りに来るべきじゃない、とお互い気が付いているものの言葉にはしない。結婚二年目の阿吽の呼吸。

思っていたよりも会場になる道が短く、やることもないので私たちもベンチで就寝することに。

ヨーロッパの早朝はめっちゃ冷え込むから耐えきれないほど寒くて、建物と対トマト防具の間に入り込もうとすると物売りの黒人が先客で座っていた。

謎にお互いちょっと照れながらニコッと微笑み合い、何も言葉は発さないものの場所をシェア。こちらも国境を越えた阿吽の呼吸。あなたたちはもっと寒く感じるよね。

白人がノースリーブ腹出し、私らがカーディガンを羽織るほどの気温の時、黒人はダウンを着てる光景をよく見たよ。

なかなか始まらないスタート

実際にトマトの投げ合いが始まるのは、会場となる道のど真ん中にある教会前に立てられた6mほどの木の棒に猛者たち(自由参加)がよじ登り、上に吊るされた生ハムが落とされた瞬間に始まります。

その木にはたっぷりの石鹸が塗られてて、しかも登ってる途中に水をかけられて邪魔されるから全然取れへんねん!笑

この石鹸、めっちゃいい匂いやけどめっちゃ目に染みるらしい

猶予は10時~12時の2時間。その間に取れなかった場合は12時に開始。

生ハムを落とした人は日本で言う福男みたいな英雄とされるから、猛者たちは協力したりしなかったり(ほぼしない)しながらよじ登っていく!

いつ取れるのかと猛者じゃない方は大注目。チームワークが芽生えてきたり、登り方の工夫が向上されたり、我先にとその作戦をぶち壊す人がいたり、、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を彷彿とさせる。

女性も果敢に参加してました。けど容赦なく顔面を足掛けにされたりしていてもう、、見るに堪えなかったよ、、、

甲乙は生ハム取り合戦にチャレンジしていたので後から現場の様子を聞くと、やっぱりスペイン人が生ハムを取るべきと思ってる人が一定数いるらしく、他の国籍の人が登ろうとすると邪魔されるらしい(笑)

この隣のエリアでは、住人が家の窓から参加者に向けて水をかけてくるんやけど、たったそれだけで生ハムが落とされるまでの2時間ずっと大騒ぎしていました。

もう一度言うけど、水がかかるだけで2時間も踊り叫び狂う、、狩猟民族こええ。。

ついに始まるトマト祭り

そんなこんなで2時間かかっても取れず。協力すればすぐに取れるはずなのに。世界平和なんて叶いっこねえな、と人間の汚い部分を二時間たっぷり見せられ、こんなところで何かを悟らされる。

ピストルの音と同時に、待ちわびた狂気の祭りがスタート。

大量のトマトを積んだトラックが何台も道のど真ん中を通り、その荷台乗っている人間が下界にいる民へ大量にトマトを投げてくる。

怯える農耕民族

こんなの人間がやることじゃねえ、、、!狂ってやがる、、!

地獄の始まり

トラックは荷台をひっくり返し大量のトマトを道に置いていく。それを拾って下界の民は宛先もなく投げ合いまくる!ちなみにトマトはめっちゃ臭い。ミートソースを夏場に4日放置した匂い

頻繁に剛速球のトマトがどこからともなく飛んできて痛い。一応ルールに「トマトは潰してから投げましょう」っていうのがあるものの、守る奴なんていない。

バケツにトマトを大量に詰め込んでかけてくる人、泣いている女性、トマトの海に飛び込む若者、あざ笑うかのように上から水をかけてくる住人。。カオスな時間が一時間続く。

長時間の生ハム取り合戦と徹夜とトマトの悪臭に耐え切れず、後半は前日に調査した脇道で魂が抜けたように傍観してました。つらかった。。笑

冷静に考えれば「ただトマトを投げ合う」だけやのに、世界中の人間がその行為に魅了され、平日にも関わらずこの場所に集い、一時間ひたすらにトマトをぶつけ合うなんて狂気すぎる。

ここでは冷静になったものが敗者と思った。ストッパーを外して頭を回転させずただ楽しむことに集中しないといけない。日本社会で人の目を気にするようにと揉まれた私らはストッパーの外し方が分らなくなってしまってるんやわ。本当に狂ってるのはどっちなんやろ。

闘いが終わって

ピストル音と共に一時間続いたトマトぶん投げ合戦は終了。全身真っ赤になった二万人の人間たちが去っていく。道はトマトで真っ赤に染まり、地獄のよう。

終末でも来たんかと思った

町の住人たちが上から水をかけたり、ホースでトマトを洗い流してくれてめっちゃありがたい。

お祭りが始まる前は「こんな祭り、地元でやられたら嫌やろなあ」「普通の田舎町に世界中から人が集まってくるってどんな気分なんやろ」と思ってたけど杞憂やったみたい。住人ものりのりで楽しんでる。(あくまで参加はしないけど笑)

狩猟民族たちはこの三時間に及ぶ大騒ぎにも飽き足りず、アフターパーティーなるものでまた大騒ぎしてました。体力どこから来てんのおお、、

バレンシアへ帰宅しパエリア打ち上げ

めっちゃ楽しかったし、本当に行ってよかった。けどもうきっと二度目はないだろうという感想。桁外れの陽気なお友達複数人で行くのがおすすめ。

満身創痍で一時間の電車ではバレンシアに到着したことにも気づかないまま爆睡。なにも盗まれずケガもなく生きて帰宅出来てよかった。バレンシアの駅が中野駅かと錯覚するほど安心した。

iPhoneやパスポートを首から下げていても、それを引きちぎられて盗まれた人も多かったみたい。

甲乙とバレンシアでパエリアを食べる約束をしていたものの、先に到着したのでカフェで休憩。やばかったよね、と少々興奮気味で話しながら、フルマラソンを終えたような達成感。走ったことないけど。

豆知識

パエリアはスペイン東部バレンシア地方発祥の食べ物!
ウサギ肉・インゲンが入っているのが特徴。カレー粉っぽい香りがして、日本で食べるものよりちょっと油っぽく、固めのお米でした。

パエリアを四人で囲み、トマト祭りの感想を語り、話し足りないながらも甲乙とお別れ。

お別れの言葉は「またどこかの国で!」

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niko
'94年生まれの28歳。平成の諸葛孔明と言われるスキルで2年間片思いした会社の同期を旦那に昇格。金融会社5年目で脱サラし、新婚旅行を兼ねて世界一周旅行中。一家全員B型のサラブレッドとして生まれ、情緒が安定したことがない。